夢十夜 

漱石夢十夜」でユメのコラボ…11人の監督が映画
2005年11月02日(水) 夕刊フジ


夕刊フジ


 夏目漱石幻想小説夢十夜」が、ベテランから若手まで11人の監督(うち一組は共同監督)によってオムニバス映画「ユメ十夜」(日活、来年公開)として撮影が進んでいる。その中の「第六夜」(松尾スズキ監督)では、鎌倉時代の仏師、運慶が現代風のダンサーの衣装で登場し、「キターーー!」「萌え〜!」などのセリフを発し、仏像を刻みながら流行のトランスに乗って踊るという奇想天外なミュージカル仕立て。漱石と2ちゃんねら〜が“夢のコラボ”!?

 漱石の「夢十夜」といえば、「こんな夢を見た。」で始まる短編集。


 「第六夜」は「運慶が護国寺の山門で仁王を刻んでいると云う評判だから、散歩ながら行って見ると…」と書き起こし、漱石は明治によみがえった運慶を描いている。映画の「第六夜」では、ストリートダンサーのTOZAWAが運慶に扮する。大スターの登場に沸く群衆たちの手拍子とステップにノリながら、ノミをふるうという趣向。さて、どんな像を彫り上げるのか…。


 松尾は「演じるだけではないので気持ちは複雑。『ユメ十夜』全体を通して見たときに、へんな夢を見たなと思ってほしい」と語るが、「第一夜」(実相寺昭雄監督)では役者として小泉今日子(39)と共演。こちらでは漱石の弟子、内田百聞をイメージした作家「百聞」を演じている。


 松尾はこのほど、都内で行われた撮影現場で、「『夢十夜』は漱石文学の中でも自由で創造的な物語。原作中でも『第一夜』は十話の中でもより美しくてすてきな作品。実相寺監督の映像世界と、久世光彦さんの脚本で完成している世界観を壊さないよう演じています」と話した。妖艶な長襦袢姿で登場した小泉も「ラインナップされた監督の名前を見ただけで、興味がわいてくる作品になります」と「ユメ十夜」の魅力を語った。


 映画は最年長の市川崑監督(80)から、最年少山下敦弘監督(30)まで、幅広い世代の監督がそれぞれの個性をぶつけ合うユメの競作にもなりそう。


 これまでのイメージを一新するバラエティーあふれる漱石像が楽しめる作品の完成は来春。公開は秋の予定。